借地の更新料は、契約と合意の中にある
——最高裁昭和51年判決の整理

契約と現場の両面から、判断材料を整える。

借地契約が更新の時期を迎えたとき、地主から更新料を請求される。金額の根拠は「相場です」「慣習です」と説明される。契約書を見直しても、更新料の文言があいまいなまま長く放置されている。

このとき、まず整理しておきたい前提がひとつあります。借地の更新料は、地代のように法律で当然に発生するものではない、という前提です。これは最高裁判所が昭和51年に示した整理であり、現在も実務の出発点になっています。

このコラムでは、判例の中身そのものよりも、その判例を踏まえて「自分の借地契約を見るときに何を確認すればいいか」を整理します。

この状態で起きること

更新の時期が近づき、地主または管理を担う不動産会社から、更新料の金額が示されます。「借地権価格の◯%」「近隣の相場」といった説明が添えられることもあります。

契約書を取り出して確認しても、更新料についての記載が見つからない、あるいは「相当の更新料を支払う」とだけ書かれており、金額の計算方法までは書かれていない。そういうケースは少なくありません。

借地人側は、払うべきなのか、減額を求めてよいのか、断ってよいのかが判断できないまま、期限が近づいていきます。地主側もまた、「これまでこうしてきた」という根拠以外に、明確な算定の理由を示せないまま請求を続けていることがあります。

止まっているのは、どちらかが間違っているからではありません。前提となる契約の内容が、整理されないまま時間が経過しているためです。

なぜ止まるのか

借地の更新料には、地代のような明文の根拠規定がありません。借地借家法にも民法にも、「更新時には更新料を支払う」と書かれた条文は存在しません。

最高裁は昭和51年10月1日の判決で、宅地の賃貸借が法定更新された際に、地主が請求すれば当然に借地人に更新料の支払義務が生じる——そういった商慣習や事実たる慣習は存在しない、と整理しました。「この地域ではそうなっている」という理由だけでは、支払義務の根拠にはならないということです。

そのため、更新料の支払義務が発生する根拠は、原則として契約書の特約か、当事者の明確な合意に限られます。

ただし、契約書に書かれていれば常に有効、というわけでもありません。東京地裁平成23年7月25日判決では、「相場による更新料を支払う」という趣旨の記載があった事案で、法定更新の場合にまでその条項が当然に適用されるとは認められませんでした。東京高裁令和2年7月20日判決でも、「相当の更新料」という文言について、金額を客観的に算出できる基準が示されていないとして、支払請求権が否定されたと整理されています。

一方で、最高裁平成23年7月15日判決は、建物賃貸借の事例ながら、更新料の金額や計算方法が一義的かつ具体的に記載されており、不当に高額でない場合には、その条項を有効としました。

整理すると、借地の更新料の支払義務が問題になるとき、判断は二段階で進みます。第一に、特約や合意があるかどうか。第二に、その特約の内容が、金額・算定方法・適用される更新の種類について十分に明確かどうか。この二段階のどちらかで止まると、支払義務は争点になります。

止まっているのは、契約書の文言と、判例上の整理と、当事者の認識が、それぞれ別の場所にあるためです。

整理するとどうなるか

判例の整理を踏まえて、自分の借地契約を見るときに確認するポイントは、概ね四つです。

ひとつ目は、契約書に更新料に関する条項があるかどうか。条項そのものがない場合、支払義務の根拠は契約書ではなく、別途の合意や支払いの経緯に求めることになります。

ふたつ目は、その条項に金額または計算方法が具体的に書かれているか。「相当の」「相場による」といった抽象的な表現にとどまっている場合、その文言だけで具体的な金額の支払義務が導けるかは、判例上、慎重に判断されています。

みっつ目は、その条項が、合意による更新だけを対象としているのか、法定更新の場合にも及ぶのか。合意更新を前提とした文言は、法定更新にそのまま及ばないと整理された判例があります。

よっつ目は、過去に更新料を支払った経緯があるかどうか。過去に支払いがあったという事実は、判断の材料のひとつになります。ただし、過去に払ったから将来も当然に払う義務がある、と直結する話ではありません。当時どのような合意のもとに支払われたのか、という経緯まで含めて見る必要があります。

この四点を整理すると、「払うべきかどうか」を直接判断する前に、「自分の契約に支払義務の根拠があるのか、あるとしてその根拠はどこまで明確なのか」という前段の論点が見えてきます。判例が示しているのは、まさにこの前段の論点を飛ばさないでほしい、ということです。

整理が進めば、地主側にとっても借地人側にとっても、議論する場所が「相場かどうか」から「契約の根拠が何か」に移ります。話す相手が変わるわけではありませんが、話す対象が変わります。

次の一手

更新料を求められた段階、または求めようとしている段階で取り得る道筋は、いくつか並んでいます。

ひとつは、契約書の現物を一度確認することです。手元にない場合、地主・借地人それぞれの側で、過去の控えや管理してきた不動産会社、相続で引き継いだ書類の中を確認することから始まります。

もうひとつは、過去の更新時に何が行われていたかを整理することです。前回の更新で更新料の授受があったのか、覚書や合意書が交わされたのか、領収書はどう発行されていたか。事実の経緯が、判断の前提になります。

そのうえで、契約書の文言と�