第一歩|基礎知識

土地の価格は1つではない
路線価・固定資産税評価額・実勢価格の違いと借地への影響

同じ土地に対して、複数の「価格」が存在します。どの価格を基準にするかで、地代や更新料の目線は大きく変わります。借地の整理を始める前に、まずここを確認してください。

対象:地主・相続で借地を引き継いだ方 所要時間:約7分

なぜ「この土地はいくら」が1つに決まらないのか

「この土地はいくらですか」と聞かれたとき、答えは1つではありません。路線価で計算するか、固定資産税評価額で見るか、実際の売買事例から考えるか——使う基準によって、出てくる金額は大きく変わります。

これは誰かが間違っているのではなく、それぞれの価格が異なる目的のために設計されているからです。この違いを理解することが、借地の地代・更新料・承諾料を整理するときの最初の一歩になります。

この記事のポイント 土地の価格には「路線価」「固定資産税評価額」「実勢価格」など複数の種類があり、それぞれ目的が異なります。地代や更新料を考えるとき、どの価格を基準にするかで目線が変わります。話し合いで基準がかみ合わない原因の多くは、ここにあります。

土地の価格の種類と目的

代表的な土地の価格は、以下の4種類です。それぞれの目的と特徴を整理します。

価格の種類 主な目的 水準の目安 更新頻度
公示地価・基準地価 売買の一般的な目安 実勢価格に近い 年1回
路線価 相続税・贈与税の計算 公示地価の約80% 年1回(7月)
固定資産税評価額 固定資産税・都市計画税の計算 公示地価の約70% 3年ごと
実勢価格 実際の売買取引 市場の実態に最も近い 随時(取引ごと)
上記の水準はあくまで一般的な目安です。エリア・時期・土地の個別条件によって異なります。

路線価とは

国税庁が毎年7月に公表する価格で、相続税・贈与税の計算に使われます。道路(路線)ごとに1㎡あたりの価格が設定されており、国税庁のウェブサイトで誰でも確認できます。

一般的に公示地価の80%程度の水準とされており、借地の整理を考えるとき、更地価格を推計するための参考値の一つとして使われることがあります。「相続税計算用の価格」であり、実際の売買価格とは異なることに注意が必要です。

固定資産税評価額とは

市区町村が3年ごとに評価する価格で、固定資産税・都市計画税の計算に使われます。毎年届く固定資産税の納税通知書に記載されているのがこの価格です。

一般的に公示地価の70%程度の水準とされており、4種類の中で最も低くなりやすいのが特徴です。「課税のための価格」であり、市場での取引価格を直接示すものではありません。

実勢価格とは

実際に売買が成立した価格のことです。市場の実態を最も直接的に反映しており、需給バランスや個別の条件によって変動します。国土交通省の「不動産取引価格情報」で実際の取引事例を確認できます。

ただし、全く同じ条件の土地は存在しないため、近隣の事例を参考にするものであり、そのまま当てはまるわけではありません。

借地の話し合いで「基準のズレ」が起きやすい理由

借地の地代・更新料を整理しようとするとき、地主と借地人が参照しやすい価格が自然と異なることがあります。

地主の立場から見えやすい価格

土地の資産価値を考えるとき、路線価や実勢価格(市場価格)が目に入りやすくなります。「市場ではこのくらいの価値がある土地なのに、地代が低すぎる」と感じるのは、この視点からです。

借地人の立場から見えやすい価格

固定資産税評価額(納税通知書に記載される金額)や、長年払い続けてきた従前地代が現実の基準として浮かびやすくなります。「これまでこの金額でやってきた」という感覚は、この視点から来ています。

どちらかが「嘘をついている」のではありません。使っている基準が違うまま話し合いを始めると、双方が「客観的な数字」を出しているつもりでも、議論がかみ合わなくなります。

専門家でも立場によって説明が変わることがある

不動産業者や専門家であっても、地主側の視点で整理する場合と、借地人側の視点で整理する場合とでは、参照する価格や説明のしかたが変わることがあります。これはどちらかが不誠実だということではなく、立場によって「何を基準に置くか」が自然と変わるという現実です。

たとえば、地代の妥当性を整理するとき、実勢価格をもとにした更地価格を基準にすれば高めの水準が導かれやすく、固定資産税評価額を基準にすれば低めの水準が導かれやすくなります。

借地の金額を整理するとき、どの価格をどう使うか

1つの価格だけで判断しない

地代や更新料を考えるとき、1種類の価格だけを基準にすることには限界があります。固定資産税評価額は課税のため、路線価は相続税計算のために設計されており、「借地の地代を決めるための価格」として作られているわけではありません。

実務上は、複数の価格を並べて「更地価格の目線を整理する」という考え方が参照されることがあります。

固定資産税評価額だけでは足りないことがある

地主の方の中には、固定資産税評価額を基準に地代の水準を考えているケースが見られます。固定資産税評価額は一般的に実勢価格より低い水準に設定されているため、実際の土地価値との乖離が生じていることがあります。

地代の見直しを検討する場面では、固定資産税評価額だけでなく、路線価や実勢価格も参照して「全体の水準感」を把握しておくことが整理の材料になります。

次のステップ:更地価格を整理する

地代・更新料・承諾料の多くは、「更地として見たときの土地の価値(更地価格)」を起点に計算が組み立てられます。価格の種類と目的の違いが整理できたら、次は更地価格の考え方に進んでください。

東京23区・葛飾区で考えるときの注意点

東京23区を含む都市部では、路線価・固定資産税評価額と実勢価格のズレが大きくなりやすい傾向が見られます。地価の上昇が進むエリアでは、固定資産税評価額ベースで見た地代の水準と、実勢価格から考えた更地価格の水準との間に乖離が生まれやすくなります。

葛飾区周辺では、旧法借地権(1992年以前の契約)の契約が多く残る特性があります。地代の水準を固定資産税・都市計画税との関係(倍率)で考える慣行が見られることがあり、固定資産税評価額が地代の水準感を把握するための入口として使いやすい面があります。

ただし、同じ葛飾区内でもエリア・路線・個別事情によって状況は大きく異なります。地域の傾向はあくまで参考として使いながら、個別の土地・契約を踏まえた確認が必要です。

よくある質問

Q 固定資産税評価額だけで地代を決めても問題ありませんか?
固定資産税評価額は課税のための価格であり、一般的に実勢価格より低い水準に設定されています。これだけを基準にして地代を設定すると、実際の土地市場での価値との乖離が生まれやすくなることがあります。路線価や実勢価格も合わせて確認し、複数の視点から水準感を把握することが整理の材料になります。
Q 路線価と実勢価格、どちらを基準にすればよいですか?
どちらかが「正しい基準」というわけではなく、それぞれ異なる目的のために設計された価格です。路線価は相続税計算のための参考値、実勢価格は実際の売買市場での価格です。借地の地代や更新料を考えるときは、どちらか一方に絞るのではなく、複数の価格を並べて「水準感のレンジを把握する」という考え方が実務上参照されることがあります。
Q 価格は毎年変わりますか?
路線価・公示地価は毎年更新されます。固定資産税評価額は3年ごとの評価替えが行われます。実勢価格は市場の状況に応じて常に動いています。更新や地代見直しを検討する場面では、その時点での最新の価格水準を確認しておくことが整理の材料になります。

次に読む記事

土地の価格の種類が整理できたら、次は「更地価格」の考え方に進んでください。地代・更新料・承諾料の計算起点になる概念です。

個別の状況を確認したい方へ

この記事で整理した考え方を、ご自身の土地に当てはめてみたい場合は、状況確認からお気軽にご連絡ください。初回は費用なしで対応します。法的判断・税務判断は含みません。

e不動産屋株式会社

東京都知事免許(1)第1122324号

東京都葛飾区東立石3-32-3

代表取締役 井口雄介

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