第二歩|基礎知識

更地価格の出し方
借地の地代・更新料・承諾料を考えるための基準の作り方

地代・更新料・各種承諾料の計算起点になる「更地価格」の考え方を整理します。1つに決めるのではなく、複数の方法からレンジで把握することが実務の出発点です。

対象:地主・相続で借地を引き継いだ方 所要時間:約8分

更地価格とは何か、なぜ必要か

借地の地代・更新料・譲渡承諾料・建替承諾料・用途変更承諾料——これらのお金を整理しようとすると、必ず行き着く概念があります。それが「更地価格」です。

更地価格とは、その土地に借地権などの権利が設定されていない状態(まっさらな更地)として見たときの市場価値の目安のことです。この価格を起点に、各種のお金の計算が組み立てられることが多くあります。

この記事のポイント 更地価格は「1つの正解を出すためのもの」ではなく、「判断のためのレンジを作るためのもの」です。路線価・実勢価格・固定資産税評価額・鑑定評価の4つの方法を組み合わせて、下限・中間・上限の幅として把握することが実務上の出発点になります。

更地価格がなぜ計算の起点になるのか

借地の場合、土地には「地主の権利(底地)」と「借地人の権利(借地権)」が重なっています。地代・更新料・各種承諾料は、この権利関係の中で発生するお金です。

その金額を考えるとき、「権利が重なる前の、土地そのものの価値(更地価格)」を基準に置くことで、計算の出発点が作りやすくなります。

更地価格・借地権価格・底地価格の関係

基本的な価格の関係(概念整理)
概念意味計算の考え方(参考)
更地価格 権利が何も設定されていない状態の土地の価値 各種方法で算定(詳しくは下記)
借地権価格 借地人が持つ権利の価値 更地価格 × 借地権割合(参考値)
底地価格 借地権が設定された状態での地主の持分の価値 更地価格から借地権価格を差し引いた水準

※各価格の関係は簡略化した参考です。実際は個別事情によって変わります。

更地価格の出し方——4つの考え方

更地価格を推計するとき、実務上は複数の方法が参照されることがあります。それぞれ異なる情報源を使った「異なる角度からの推計」です。どれか一つが絶対的に正しいわけではありません。

方法① 路線価ベース

国税庁が毎年公表する路線価を使って更地価格を概算する方法です。路線価は公示地価のおおむね80%程度の水準で設定されているとされているため、以下のような考え方が使われることがあります。

計算の考え方(参考)

更地価格の概算 ≒ 路線価(円/㎡)× 面積(㎡)÷ 0.8
ただしこれはあくまで概算の参考です。奥行補正・形状補正などの個別要因は反映されません。路線価は国税庁のウェブサイト(財産評価基準書)で誰でも確認できます。

方法② 実勢価格ベース

実際に売買が成立した近隣の取引事例から、更地価格の水準感を把握する方法です。市場の実態に最も近い参考値として位置づけられます。国土交通省の「不動産取引価格情報(土地総合情報システム)」で近隣事例を確認できます。

ただし、全く同じ条件の土地は存在しないため、近隣事例はあくまで「参考として参照するもの」です。個別の条件差が大きい場合は、実勢価格の目線が他の方法と大きく乖離することもあります。

方法③ 固定資産税評価額ベース

市区町村が3年ごとに評価する固定資産税評価額に一定の倍率をかけることで、更地価格の参考値を概算する方法です。固定資産税評価額は公示地価の70%程度とされているため、逆算することができます。

計算の考え方(参考)

更地価格の概算 ≒ 固定資産税評価額 ÷ 0.7
倍率はエリアや評価時期によって変わります。また固定資産税評価額は3年ごとの評価替えのため、地価の急変動に対してタイムラグが生じることがあります。

方法④ 不動産鑑定士による評価

不動産鑑定士が個別事情(立地・接道状況・形状・周辺取引・収益性など)を踏まえて算定する方法です。机上の概算よりも実態に近い水準感を把握しやすく、更新料・承諾料の話し合いでより強い根拠が必要な場面で検討されることがあります。

ただし、専門家への依頼になるため費用がかかります。最初から鑑定評価が必須というわけではなく、まず方法①〜③で大まかなレンジを整理し、必要に応じて鑑定評価に進む流れが実務上使いやすいことがあります。

更地価格は「レンジ」で把握する

4つの方法で出てくる数字を並べると、それぞれ異なる値になります。この「ズレ」は計算のミスではなく、それぞれの方法が異なる角度から同じ土地を推計しているためです。

このズレを「どれが正しいか」と争うのではなく、「下限・中間・上限のレンジとして把握する」ことが、実務上の整理の考え方です。

更地価格のレンジ設計(参考)
区分主な算定方法位置づけ
下限 固定資産税評価額ベース 課税用価格から逆算。低く出やすい傾向
中間 路線価ベース(÷0.8) 実務上よく参照されるライン
上限 実勢価格ベース 市場実態に最も近い。個別差が大きい
個別評価 不動産鑑定士による評価 個別事情を反映。強い根拠が必要な場面で

※上記は考え方の整理です。実際の金額は、エリア・個別事情・時期によって大きく変わります。

このレンジを持っておくことで、「なぜこの金額を提案するのか」を説明しやすくなります。また、相手から異なる基準が提示されたときも、「それはどの方法で計算したものか」を確認する土台になります。

更地価格の計算には、正確な面積が前提になります。古い借地では、登記簿の面積(公簿)と実際の面積(実測)が異なることがあります。面積が間違っていると計算結果もずれるため、まず面積の確認を先に行うことが整理の順番として重要です。

更地価格のレンジ、実務ではどう使うか

地代の見直しを考えるとき

現在の地代が「更地価格に対してどのくらいの割合(利回り)になっているか」を確認することが、水準感を把握する手がかりになります。固定資産税評価額ベースの下限の目線と、路線価・実勢価格ベースの中間・上限の目線を並べることで、「現在の地代がどの位置にあるか」が整理しやすくなります。

更新料を考えるとき

更新料は実務上「更地価格の○%」として考えることがある考え方の一つです。更地価格のレンジが整理できると、「この土地の更新料として説明できる根拠の幅」が見えてきます。

承諾料を考えるとき

譲渡承諾料・建替承諾料・用途変更承諾料なども、更地価格または借地権価格(更地価格×借地権割合)に対する割合として考えることがある考え方の一つです。更地価格のレンジを把握した上で、各承諾料の目安を整理します。

東京23区・葛飾区で考えるときの注意点

東京23区を含む都市部では、固定資産税評価額・路線価・実勢価格の3つの目線の開きが大きくなりやすい傾向があります。特に再開発の進むエリアや駅近の立地では、実勢価格が路線価や固定資産税評価額を大きく上回るケースも見られます。

葛飾区周辺では旧法借地権が多く残るエリアとして、固定資産税評価額との関係(倍率)で地代の水準を考える慣行が見られることがあります。この慣行を前提にすると、固定資産税ベースの更地価格の目線が地代の水準感を確認する入口として使いやすい面があります。

同じ葛飾区内でもエリアや個別事情によって状況は大きく異なります。地域全体の傾向はあくまで参考として使いながら、個別の土地ごとに確認することが出発点です。

よくある質問

Q 路線価 ÷ 0.8 で更地価格が分かりますか?
路線価が公示地価のおおむね80%水準で設定されているとされることから、逆算して更地価格を推計する考え方の一つとして使われることがあります。ただしこれはあくまで概算の参考値であり、実際の売買価格を保証するものではありません。奥行補正・形状補正など個別要因は反映されないため、「一つの目線として使う」という位置づけが実務上の考え方です。
Q 更地価格は1つに決めなければなりませんか?
必ずしも1つに絞る必要はありません。複数の方法で出た数字を「下限・中間・上限」のレンジとして整理することが、実務上の考え方の一つです。「この土地の更地価格はおおよそ○円〜○円の水準で見られる」という幅を把握しておくことで、地代・更新料・承諾料を整理するときの根拠が作りやすくなります。
Q 鑑定評価は最初から取る必要がありますか?
必ずしもそうではありません。まずは路線価・固定資産税評価額・実勢価格を使って大まかなレンジを整理することが、実務上の出発点として使いやすい場合があります。その上で、更新料・承諾料・地代見直しの話し合いでより強い根拠が必要になった場面や、双方の認識の差が大きい場面で、鑑定評価の検討に進む流れが使われることがあります。

次に読む記事

更地価格の目線が整理できたら、次は「どの場面でどんなお金の整理が必要になるか」の全体像を確認してください。

個別の状況を確認したい方へ

更地価格のレンジを自分の土地で整理したい場合や、地代・更新料の根拠を一緒に確認したい場合は、必要に応じてご相談ください。初回は費用なしで対応します。法的判断・税務判断は含みません。

e不動産屋株式会社

東京都知事免許(1)第1122324号

東京都葛飾区東立石3-32-3

代表取締役 井口雄介

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