建替えの際に承諾料が必要になる場面——金額・交渉・地主が承諾しないとき

借地上の建物が古くなり、建て替えを考えるとき、自分の建物だからといって自由に進められるわけではありません。 土地そのものは地主のものなので、建替えには原則として地主の承諾が必要です。

そして、その承諾には承諾料の支払いが伴うことがあります。 さらに、木造から鉄筋コンクリートへの建替えなど、構造を変更する場合は別の承諾料も発生します。 地主が承諾しない場合は、裁判所の許可を求める手続き(借地非訟)という選択肢もあります。

このページでは、建替えに伴って承諾料が必要になる場面と、その判断に必要な論点について整理しています。

この状態で起きること

建替えに地主の承諾が必要だと知らない

借地上の建物は借地人の所有物なので、自由に建て替えられると思いがちです。 ただし、契約書に「建物の建替え・増改築には地主の事前承諾を要する」という条項がある場合(多くの借地契約書に記載されています)、地主の承諾なしに建替えを進めることはできません。

承諾を得ないまま着工した場合、契約違反として契約解除を求められる可能性があります。

承諾料の金額が予想以上に大きい

建替え承諾料は、更地価格の3%程度が一般的な目安とされています。 例えば更地価格が5,000万円の土地の場合、承諾料は150万円前後になります。

さらに、木造から鉄筋コンクリート造への建替えなど、構造を変更する場合は「借地条件変更承諾料」も発生し、更地価格の8〜12%(中央10%)が目安となります。 両方が発生する場合、合計で更地価格の10%以上の金額になることがあります。

地主が承諾を渋る・条件をつける

建替えの相談をしたところ、地主が承諾を渋る、または高額な承諾料を提示する、という状況に直面することがあります。 特に、相続で世代交代した地主の場合、過去の経緯が十分に共有されておらず、条件の考え方に差が出ることがあります。

逆に、長年の関係で承諾料なしで合意できるケースもあります。

住宅ローンが組めるか分からない

借地上の建物を建て替えるとき、住宅ローンを組むためには地主の承諾書類が必要です。 銀行は、地主の承諾なしに借地上の建物にローンを設定することを基本的にしません。

地主の協力が得られないと、現金で建て替える以外の方法がない、という状況に直面することがあります。

なぜ前に進まないのか

承諾料の相場が一律でない

建替え承諾料の相場は「更地価格の3%程度」とされていますが、地域・建物の構造・契約内容によって幅があります。 木造の建替えなら3%、堅固建物への構造変更なら追加で8〜12%、というのは目安であって、地主との交渉で決まる金額です。

「いくら払えば確実に承諾を得られる」という明確な基準がないため、交渉の前提が揃いません。

構造変更承諾料との区別が難しい

「建替え承諾料」と「借地条件変更承諾料」は別の名目の支払いですが、実務では混同されることがあります。 木造から鉄筋コンクリートへの建替えのように、構造変更を伴う建替えの場合、両方の承諾料が発生する可能性があります。

地主から「建替え承諾料として○○万円」と提示されたとき、それが構造変更を含めた金額なのか、別途構造変更承諾料が必要なのかを確認しないと、後から追加請求される可能性があります。

地主の協力範囲が見えない

建替えには、承諾そのものだけでなく、住宅ローンを組むための承諾書類・建築確認申請への押印など、地主の協力が複数の場面で必要になります。 承諾料を支払えば全ての協力が得られるのか、別途協議が必要かが、最初の段階では見えません。

協力が得られないことで、計画が途中で止まることもあります。

借地非訟の認識が薄い

地主が建替えを承諾しない場合、裁判所に申し立てて承諾に代わる許可を得る手続き(借地非訟)があります。 この場合、裁判所が定める金額(地主への給付金)を支払うことで、建替えが可能になります。

ただし、借地非訟の制度を知らない借地人も多く、地主が承諾しないと建替えを諦めてしまうケースもあります。

整理するとどうなるか

建替え承諾料の論点を全体として把握できると、地主との交渉や、建替え計画全体の判断材料が揃います。 具体的には、次の手順で確認していきます。

確認の手順

1. 契約書の建替え・増改築条項を確認する

最初に、借地契約書に「建物の建替え・増改築には地主の事前承諾を要する」という条項があるかを確認します。 ほとんどの借地契約書には記載がありますが、書かれていない場合の判断は変わります。

条項の内容(承諾料の規定の有無・構造変更時の扱い)も合わせて確認します。

2. 建替え計画の構造を確認する

予定している建替えが、現在の建物と同じ構造(木造→木造)か、構造変更を伴う建替え(木造→鉄筋コンクリート)かを確認します。 構造変更を伴う場合、借地条件変更承諾料が追加で発生します。

旧法借地権の場合、堅固建物(鉄筋コンクリート等)と非堅固建物(木造等)の区別が、契約期間や承諾料に影響します。

3. 承諾料の相場を把握する

建替え承諾料の目安は更地価格の3%程度。借地条件変更承諾料は更地価格の8〜12%程度(中央10%)が目安です。 更地価格は、路線価や近隣の取引事例から推測できます。

これらは目安であり、地主との交渉で決まる金額です。地域や契約内容によって幅があります。

4. 地主に建替えの相談をする

承諾料の相場を把握した上で、地主に建替えの相談をします。 いきなり「承諾料はいくらですか」と切り出すのではなく、建替えの理由・計画の概要・希望時期などを伝えながら、関係を保ちつつ進めるのが一般的です。

地主が承諾する場合、承諾料の金額・支払い時期・契約期間の延長有無などを書面で取り決めます。

5. 住宅ローン・建築確認の必要書類を準備する

建替えには、地主の承諾書類が複数の場面で必要になります。

  • 住宅ローンを組む場合:金融機関への提出用承諾書
  • 建築確認申請:地主の押印が必要なケース
  • 火災保険:借地権の証明書類

これらを建替え計画と並行して、地主から取得していきます。

6. 地主が承諾しない場合の選択肢を理解する

地主が建替えに承諾しない場合、以下の選択肢があります。

  • 借地非訟(地主の承諾に代わる裁判所の許可):裁判所が定める金額を支払うことで建替えが可能になる手続き。
  • 建替えを諦める:現在の建物のまま住み続ける、または借地権を売却する。
  • 再交渉する:時間を空けて、条件を変えて再度相談する。

借地非訟は弁護士への相談が前提となる手続きですが、選択肢として知っておくことで、交渉の前提が変わってきます。

整理されると、何が変わるか

建替え承諾料の論点を全体として把握できると、次のような判断が可能になります。

承諾料の相場と契約書の規定を踏まえて、地主から提示された金額の妥当性を判断できる。構造変更を伴う場合の追加承諾料を見落とさず、総額を把握できる。住宅ローンを組むのに必要な書類を、計画的に取得できる。地主が承諾しない場合の借地非訟という選択肢を知った上で、交渉の前提が変わる。建替え計画全体の予算と時期を、現実的に立てられる。

建替えは借地人にとって大きな判断であり、一度の判断で数十年先の生活