借地が絡む土地
借地に建物を持っている。
この先、住み続けるのか、売るのか、整理して考える必要があります。
契約・地代・更新料・建替え・譲渡——論点を切り離して考えるのではなく、全体を一度横断して見ることで、住み続ける・売る・整理する、どの方向の判断もしやすくなります。
01
この状態で起きること
論点が単発で出てくる
借地人にとって、契約のことを考える場面は、何かが起きたときに突然やってきます。更新時期が来た、建替えを考えたい、地主から地代の値上げを言われた、相続で建物を引き継いだ——こうした場面ごとに、その都度どう判断すればいいか考えることになります。
ただし、それぞれの論点は実は連動しています。建替えの承諾料の判断は、契約形態によって変わります。譲渡承諾料の判断は、相続を見据えた整理と関係します。論点ごとに切り離して考えると、判断を誤ることがあります。
契約書を読んだことがない
借地契約書は、最初に取り交わされたきり、開く機会がないまま保管されていることが多くあります。親の代から続く借地の場合、契約書を一度も見たことがない、保管場所を聞いていない、というケースも珍しくありません。
何か判断が必要な場面が来たときに、初めて契約書を探し始めることになります。
地主との関係が薄れている
地代が銀行振込になり、更新も自動で続いている場合、地主と直接話す機会はほとんどありません。地主の世代が変わっていることもあり、何か相談が必要になったとき、誰に連絡すればいいか分からない、という状態が起きます。
どこに相談すればいいか分からない
借地に関する相談は、一般的な不動産会社では「借地は難しい」と扱いを断られることがあります。弁護士に相談するほどではないかもしれない、税理士は借地のことは詳しくない、と感じているうちに、判断が必要な場面が過ぎていきます。
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なぜ前に進まないのか
借地は「安定している」ように見える
借地は、地代を払い続けている限り、住み続けることができます。借地人の側から能動的に動く理由は、特にありません。建替え・譲渡・更新といった判断が必要な場面が来るまで、契約を見直す機会も生まれません。
借地に関する情報が、横断的に把握されていない
借地に関する情報は、契約内容・地主との関係・建物の登記・相続関係など、複数の領域にまたがっています。それぞれの領域ごとに専門家がいますが、借地という一つの資産を横断的に見る役割は、構造的に存在していません。
親の代から引き継いだ場合、経緯が分からない
親から借地を相続した場合、契約に至った経緯・地主との関係性・過去の交渉履歴など、書面に残っていない情報が引き継がれていないことがあります。契約書だけでは分からない部分があり、親に聞こうと思ったときには、もう聞けなくなっていることもあります。
「いま動かす理由」がない
問題が起きていない以上、借地人の側から動く緊急性はありません。ただし、地主から建替え時の承諾料が高額に提示された瞬間、譲渡しようとしたときに地主の承諾が得られない瞬間、相続が発生した瞬間に、突然「把握されていない状態」が表面化します。
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確認すると、どうなるか
借地に関する判断は、契約・地主との関係・建物・相続といった論点を、一度横断して見ることから始まります。全体を把握できると、いま動かすべきか、どの論点から優先して確認すべきか、何が判断材料として揃っていないかが見える状態になります。
借地人の立場で、判断に影響する論点は次の通りです。
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借地権を売る前に確認すること
契約内容、地主の承諾、譲渡承諾料、建物の状態、借地権価格だけで判断しないこと。
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譲渡承諾料の発生場面と相場
第三者への売却・生前贈与・遺贈で発生(法定相続人への相続では原則発生しない)。借地権価格の5〜15%が目安。
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地主との同時売却という選択肢
借地権単独より、底地と一緒に売却する方が双方の価格条件が良くなる場合がある。
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地代の値上げ要求が来たとき
根拠を確認し、近隣相場や路線価との比較を行うことで、適正な交渉ができる。
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07
自宅を賃貸として貸した場合に起きること
契約上の用途規定との関係を確認しておく。場合によっては、地主の承諾が必要。
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相続した建物の登記名義を変更しないとどうなるか
2024年4月から相続登記が義務化。過料の対象になる可能性がある。
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09
旧法借地と新法借地の違い
1992年8月1日が境目。契約形態によって借地人の権利の強さも、更新の扱いも大きく変わる。
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次の一手
進む方向は、おおむね三つに分かれます。どの方向にも、現状の把握が前提になります。