契約書と契約形態の確認——底地の判断は、ここから始まる
底地に関する判断は、契約書の内容を確認することから始まります。
ただし、長く続いている借地ほど、契約書の現物がどこにあるか分からなくなっていることがあります。
契約書がない、または契約形態が判別できない状態では、地代・更新・承諾料・売却といった判断材料がすべて揃いません。
このページでは、契約書の確認と契約形態の判別が、底地に関する判断においてなぜ最初の一歩になるのか、そして何が分かれば次に進めるのかを整理しています。
この状態で起きること
契約書が手元にない
借地契約書は、契約締結時に作成されたまま、何十年も開かれずに保管されているケースが多くあります。 親の代から続く底地の場合、契約書を一度も見たことがない、保管場所を聞いていない、というケースも珍しくありません。
借地人側が契約書を持っているはずだと思っていても、借地人側もまた相続を経ていて、現物が見つからないこともあります。 両者とも持っていない、という状態が判明することも、実務ではよくあります。
契約形態が判別できない
契約書がある場合でも、それが旧法借地権なのか、新法借地権なのか、定期借地権なのかが判別できないことがあります。 旧法と新法では、借地人の権利の強さも、地主が更新を拒絶できる条件も大きく異なります。
契約形態が分からないと、更新時にどのような交渉が可能か、建替えや譲渡の承諾料をどう判断するかが決められません。 すべての判断の前提が、契約形態によって変わってきます。
口頭の合意で続いている
書面の契約を取り交わさず、口頭の合意だけで何十年も続いている借地もあります。 この場合、地代の金額や更新の条件についても、双方の記憶や慣習で運用されているだけで、客観的な根拠が存在しません。
借地人と地主の関係が良好な間は問題が表面化しませんが、世代交代や売却の場面で、初めて「何も書面がない」という事実が判明します。
契約内容と実態がずれている
契約書はあるが、書かれている内容と現在の実態がずれていることもあります。 たとえば、契約上は借地人本人が住む前提になっているのに、実際には賃貸に出されている、事業用に転用されている、といったケースです。
こうしたずれは、契約違反に当たる可能性があるかどうかを判断する場面で問題になります。
なぜ前に進まないのか
契約書を確認する機会がない
借地は、地代が滞りなく入っている限り、契約書を開く機会がありません。 更新時期が来ても、法定更新で自動的に延長されるため、契約書を見直すきっかけがないまま時間が過ぎていきます。
地主の側から「契約書を確認させてください」と借地人に申し出ることも、関係性を疑うように受け取られかねず、なかなか言い出せません。
親の代から引き継ぐとき、現物が渡されない
底地を相続で引き継ぐ場合、契約書が紙の束として保管されていることが多く、デジタル化もされていないため、保管場所が分からなくなっていることがあります。 親が元気なうちに引き継ぎを済ませていない場合、現物の所在を確認する手段がなくなります。
契約書の中身が読み取れない
契約書が見つかっても、書かれている内容が古い表現で書かれていたり、手書きで判読しにくかったりして、自分で読み解くのが難しいことがあります。 旧法時代の契約書には、現在の借地借家法とは異なる用語が使われていることもあります。
契約形態の判定に専門知識が必要
旧法借地権・新法借地権・定期借地権の区別は、契約締結日と契約書の文言、登記情報を組み合わせて判断します。 契約締結日が借地借家法の施行日(1992年8月1日)の前か後か、定期借地権としての要件を満たしているか、といった判定は、契約書を見るだけでは分からない場合があります。
整理するとどうなるか
契約書と契約形態が確認できると、底地に関する判断のすべての前提が揃います。 更新時期、地代改定の根拠、承諾料の発生場面、借地人の権利の強さ——これらはすべて契約形態によって変わってくるため、最初に確認しておくことで、その後の判断がスムーズに進みます。
確認の手順
1. 契約書の所在を確認する
まず自分の手元に契約書があるかを確認します。手元にない場合、親族・税理士・地元の不動産会社など、過去に保管していた可能性のある場所を順に確認していきます。 それでも見つからない場合、借地人側に保管がないかを聞くことになります。
2. 契約締結日を確認する
契約書が見つかったら、最初に契約締結日を確認します。 1992年8月1日より前に締結された契約は旧法借地権、それ以降は新法借地権または定期借地権の可能性があります。
3. 定期借地権かどうかを判別する
新法以降の契約の場合、定期借地権としての要件(契約期間50年以上、更新なし、書面契約など)を満たしているかを確認します。 要件を満たさない場合は、新法の普通借地権になります。