第三歩|基礎知識

借地の地代・更新料・承諾料
発生する場面と考え方の整理

借地でお金の整理が必要になる場面は、毎月の地代だけではありません。更新・建替え・譲渡・用途変更など、7つの場面を一覧で把握し、自分がどの状況にあるかを確認してください。

対象:地主・相続で借地を引き継いだ方 所要時間:約10分

借地のお金の整理は、地代だけではない

「うちの借地は、地代を毎月もらっているだけ」——そう思っている地主の方は少なくありません。しかし実際には、借地でお金の整理が必要になる場面は複数存在します。

更新料・譲渡承諾料・建替承諾料・用途変更承諾料・条件変更承諾料・抵当権設定承諾料。これらは借地人側の事情やイベントに伴って発生する可能性があるお金です。ただし「自動的に発生する」わけではなく、契約書の定め・地域の慣行・これまでの経緯によって、発生するかどうか・いくらになるかが変わります。

この記事のポイント
  • お金の整理が必要になる場面は7種類あります
  • 毎月の地代と、イベント時に発生する6種類の一時金です
  • 旧法借地権では、地主が整理しやすいのはイベントのタイミングです
  • どの場面に自分が当てはまるかを把握することが、整理の第一歩です

7つの場面——全体像の一覧

まず全体像を把握してください。場面は大きく「毎月継続して発生するもの」と「特定のイベントに伴って発生することがあるもの」に分けられます。

No. 名称 発生する場面 目安(参考)
地代
継続
毎月・定期的に発生。見直しは更新・建替・用途変更・相続のタイミングで話題になりやすい 固定資産税の3〜5倍が参考値として参照されることがある
更新料
更新時
借地契約の更新時(旧法:20年ごと等、新法:30年・20年等) 更地価格の3〜10%程度が参照されることがある(根拠・慣行による)
譲渡承諾料
譲渡時
借地人が借地権を第三者に売却・譲渡するとき 借地権価格の10〜15%程度が参照されることがある
建替承諾料
建替時
借地人が建物を建て替えるとき 更地価格の3〜5%程度が参照されることがある
用途変更承諾料
用途変更時
住居用→事業用など、契約当初と異なる用途に変更するとき 更地価格の5〜10%程度が参照されることがある
条件変更承諾料
条件変更時
地代・利用内容・期間など、契約条件を変更するとき 更地価格の5〜10%程度が参照されることがある
抵当権設定承諾料
融資時
借地人が借地権を担保に金融機関から融資を受けるとき 借地権価格の5〜10%程度が参照されることがある
レンジについて 上記の目安はいずれも実務上参照される考え方のひとつであり、個別案件の金額を保証するものではありません。契約書の定め・地域慣行・これまでの経緯・土地の収益性などによって大きく変わります。

「継続」は毎月のように発生するもの、「イベント系」は借地人側の行動に伴って発生することがあるものです。旧法借地権では地主が日常の状態で一方的に条件変更することは難しいため、イベントのタイミングを見逃さないことが特に重要です。

① 地代——毎月・継続的に発生するお金

地代

毎月・継続的に発生する基本の収入

地代は、土地を貸すことで毎月受け取る対価です。借地における地主の基本収入であり、7種類の中で唯一、継続的・定期的に発生します。

見直しが話題になりやすいタイミング:契約の更新時・借地人が建替えや用途変更をするとき・相続など当事者が変わるとき・周辺地域の地価が大きく変化したとき

地代の水準を考えるとき、最初に参照されることが多いのは固定資産税・都市計画税との関係(公租公課倍率)です。現在の地代が固定資産税に対してどのくらいの倍率かを確認することが、水準感をつかむ手がかりになります。

地代の目安レンジ(参考)
区分固定資産税倍率の目安補足
低め 3倍前後 低収益・住居専用・長年据え置きの慣行がある場合など
中間 3〜5倍程度 実務上の落としどころになりやすいライン
高め 5倍以上 事業用・商業地域・収益性が高い場合など

※固定資産税・都市計画税の合計額に対する倍率の参考値です。路線価・実勢価格との比較(更地価格ベース)も合わせて整理することが実務の考え方です。

② 更新料——更新のタイミングで論点になるお金

更新料

更新時に一時金として発生することがあるお金

更新料は、借地契約を更新する際に発生することがあるお金です。ただし法律上「必ず支払わなければならない」という規定はなく、契約書の定め・過去の更新履歴・地域慣行が根拠になります。

発生するタイミングの目安:

  • 旧法借地権:契約期間(木造は20年等)の満了時
  • 新法借地権(普通借地権):最初の更新(30年後)以降は20年ごと
更新料の目安レンジ(参考)
区分更地価格に対する割合の目安補足
低め 3%前後 根拠が薄い・更新料の実績がない場合など
中間 5%前後 実務上の落としどころになりやすいライン
高め 7〜10%程度 事業用・地域慣行が強い・借地人に資力がある場合など

※更地価格に対する割合の参考値です。地代の月数倍(6〜12か月分等)で考えるケースも見られます。個別事情によって大きく変わります。

旧法借地権では、正当事由がなければ地主から更新を拒絶することはできません。借地人が応じない場合に強制できる手段は限られます。だからこそ、更新のタイミングで「金額の根拠をどう整理するか」が重要になります。

③〜⑦ 各種承諾料——イベント時に発生することがあるお金

③〜⑦は、借地人側の行動・変化に伴って地主の承諾が必要になる場面で発生することがあるお金です。それぞれ名目は異なりますが、更地価格または借地権価格に対する割合として考えることが多く見られます。

譲渡承諾料

借地権を第三者に売却・譲渡するとき

借地人が借地権を第三者に売却・譲渡するには、原則として地主の承諾が必要です。その承諾の対価として発生することがあるのが譲渡承諾料です。

目安:借地権価格の10〜15%程度が参照されることがあります(個別事情によって変わります)。

このタイミングは「底地を買い取ってもらう」「等価交換を提案する」といった出口設計を検討しやすい場面でもあります。

建替承諾料

借地人が建物を建て替えるとき

借地上の建物を建て替えるには、地主の承諾が必要です。建替えは借地人側の重要なイベントであり、地主にとっては条件を整理できるタイミングの一つです。

目安:更地価格の3〜5%程度が参照されることがあります。建替えの規模・用途・収益性の変化によって変わります。

地主の承諾なく建替えが行われた場合(無断建替え)は契約違反となりうる行為です。発覚した段階でまず現状を整理することが重要です。

用途変更承諾料

住居用が事業用・テナント等に変わるとき

借地の契約内容に「用途の制限」がある場合、借地人が用途を変更するには地主の承諾が必要です。気づかないうちに用途が変わっているケースが実務でよく見られます。

目安:更地価格の5〜10%程度が参照されることがあります。変更の内容・収益性の変化によって変わります。

条件変更承諾料

契約条件を変えるときの合意の対価

地代の改定・利用目的の変更・存続期間の調整など、契約条件を変更する場面で発生することがあります。用途変更承諾料と重なるケースもあります。

目安:更地価格の5〜10%程度が参照されることがあります。変更内容の重大性・双方の事情によって変わります。

抵当権設定承諾料

借地権を担保に融資を受けるとき

借地人が金融機関から融資を受ける際、借地権を担保(抵当権)として設定したい場合があります。これには地主の承諾が必要になることがあります。

目安:借地権価格の5〜10%程度が参照されることがあります。

借地権に抵当権が設定されると、借地人がローンを返済できなかった場合に、借地権が競売にかかる可能性があります。承諾するかどうか・承諾する場合の条件を慎重に整理することが必要です。

旧法借地権と新法借地権——地主が整理しやすい場面の違い

借地契約が1992年(平成4年)以前に締結されたものは旧法、以降のものは新法に基づきます。この違いは整理の考え方に影響します。

比較項目 旧法借地権(1992年以前) 新法(普通借地権) 新法(定期借地権)
借地人保護 強い(正当事由なしに更新拒絶不可) 普通借地権と同様に保護される 期間満了で終了する仕組み
更新の仕組み 法定更新(自動更新)が基本 合意更新・法定更新 更新なし(期間満了で終了)
地主が整理しやすい場面 更新・建替・譲渡・用途変更等のイベント時 イベント時+更新での整理も可能 期間満了に向けた事前整理
葛飾区周辺では旧法借地権の契約が多く残っています。旧法ではイベント時が地主にとって整理しやすい数少ない機会です。更新・建替え・譲渡・用途変更のタイミングを見逃さないことが重要です。

東京23区・葛飾区で考えるときの注意点

東京23区を含む都市部では、路線価・固定資産税評価額と実勢価格のズレが大きくなりやすい傾向が見られます。固定資産税評価額ベースで見た地代の水準と、実勢価格から考えた更地価格の水準との間に乖離が生まれやすくなります。

葛飾区周辺は旧法借地権の契約が多く残るエリアです。固定資産税倍率との関係で地代を考える慣行が見られることがあり、固定資産税評価額が地代の水準確認の入口として使いやすい面があります。立石・四つ木・青砥周辺など再開発の動向があるエリアでは、実勢価格が上昇している一方で固定資産税評価額や路線価への反映にタイムラグが生じる場合があります。

同じ葛飾区内でもエリアや個別の契約によって状況は大きく異なります。地域の傾向はあくまで参考情報として使いながら、個別の土地・契約を踏まえた確認が必要です。

実務では、まず何を整理するか

7つの場面のどれに自分が当てはまるかを確認した上で、以下の順番で整理を進めることが実務上の出発点として参照されることがあります。

  1. 1

    自分の契約が旧法・新法のどちらに基づくかを確認する

    整理の前提として、契約の法的な枠組みを把握します。

  2. 2

    契約書の内容を確認する

    地代の定め・更新料の定め・承諾料に関する定めが契約書にあるかを確認します。定めがない場合は、地域慣行や過去の実績が整理の根拠になることがあります。

  3. 3

    現在の地代が固定資産税に対してどの水準かを確認する

    地代の整理の最初の入口として、固定資産税・都市計画税との倍率関係を確認します。

  4. 4

    路線価・実勢価格の目線で更地価格のレンジを把握する

    地代・更新料・承諾料を考えるための起点となる更地価格の目線を作ります。詳しくは「更地価格の出し方」の記事で整理しています。

  5. 5

    直近のイベントの有無を確認する

    更新・建替・譲渡等が近い場合は、そのタイミングに向けた整理を早めに始めることが選択肢を広げます。

  6. 6

    面積・境界が前提として合っているかを確認する

    地代・更新料・承諾料のいずれも正確な面積を前提にした計算が基礎になります。古い借地では登記簿面積と実測面積のズレが見られることがあります。

よくある質問

Q 地代以外にもお金の整理が必要になる場面はありますか?
あります。更新・建替え・譲渡・用途変更・融資のタイミングなど、借地人側の行動や変化に伴って整理が必要になる場面が複数あります。ただし、これらが「自動的に発生する」わけではありません。契約書の定め・地域慣行・これまでの経緯によって、発生するかどうか・いくらになるかが変わります。まず自分がどの場面にあるかを確認することが出発点です。
Q 更新料は必ず発生しますか?
更新料が発生するかどうかは、主に①契約書に定めがあるか、②これまでの更新で実績があるか、③地域にその慣行があるか——の3つの要素によって異なります。法律上「必ず支払わなければならない」という規定があるわけではありません。これらが整っている場合は根拠として使いやすくなりますが、整っていない場合は整理の進め方が変わります。まず契約書と更新履歴を確認することが出発点です。
Q 承諾料はどうやって決まりますか?
承諾料の金額は、全国一律の相場があるわけではありません。更地価格または借地権価格(更地価格×借地権割合)に対する割合として考える方法が参照されることがありますが、この割合は種類・土地の条件・契約書の定め・地域慣行・これまでの経緯によって異なります。まず更地価格の目線を整理した上で、各承諾料の考え方を確認することが整理の順番として使いやすいです。
Q 旧法借地権だと何が違いますか?
旧法借地権では、借地人の権利が強く保護されており、地主が整理しやすいのは更新・建替え・譲渡・用途変更などのイベントのタイミングになることが多く見られます。日常の状態で地主が一方的に条件変更を求めることは難しいため、これらのイベントのタイミングを見逃さないことが重要になります。新法借地権でも基本的な構造は変わりませんが、定期借地権では期間満了で関係が終了する仕組みがあります。
Q 整理はいつ始めるとよいですか?
整理を始めるのに「遅すぎる」タイミングはありませんが、イベントが発生してから慌てて始めると選択肢が狭まることがあります。更新の時期が近い・建替えの話が出た・相続の準備をしたい——こういった場面が見込まれる前に、契約書の内容・現在の地代の水準・更地価格の目線を整理しておくことが、話し合いに向けた準備になります。

合わせて読む

お金が動く場面の全体像が把握できたら、第一歩の「価格の種類の違い」に戻って確認するか、各論記事で詳しく見ていきましょう。

自分の状況がどの場面に当てはまるか確認したい方へ

「更新が近い」「建替えの話が出た」「相続で引き継いだばかり」——状況によって、次に動くべきタイミングと整理すべきことは変わります。必要な場合はご相談ください。初回は費用なしで状況を確認します。法的判断・税務判断は含みません。

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東京都知事免許(1)第1122324号

東京都葛飾区東立石3-32-3

代表取締役 井口雄介

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このページの考え方は、「借地のミカタ」の一部です。

借地のミカタは、地主と土地を借りている方が、
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判断のもとになる情報は共通します。

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