借地の更新料は、
1つの式だけでは決まりません
借地の更新料は、契約書の記載、これまでの経緯、地域の慣行、土地価格、地代水準などによって考え方が変わります。このページでは、更新料を1つの正解として決めるのではなく、話し合いの前提を整理するための考え方をまとめます。
1. 借地の更新料とは
借地契約には、契約期間が満了したときに「更新」という手続きが発生します。更新とは、引き続き同じ土地を借り続けるための取り決めです。
更新料とは、この更新のタイミングで借地人が地主に支払うお金のことです。ただし、すべての借地契約に更新料が発生するわけではありません。
更新料が発生するかどうか、発生するとすればいくらになるかは、契約書の内容と、それまでの経緯によって異なります。「借地の更新料はいくら」と一律に決まるものではありません。
借地には旧借地法(旧法)と借地借家法(新法)があり、契約の時期や種類によって更新の仕組みも異なります。定期借地権の場合は、そもそも更新のない契約です。まず自分の契約がどの種類に当たるかを確認することが、起点になります。
2. 更新料の支払いを考えるときの確認点
更新料の支払いについて考えるとき、まず確認すべきことがあります。
一つ目は、契約書に更新料の定めがあるかどうかです。契約書に「更新料として○○円を支払う」「更地価格の○%を支払う」のような記載があれば、その内容が基準になります。
二つ目は、過去の更新時にどのような取り扱いをしてきたかです。前回の更新のときに更新料を支払った経緯があれば、それが慣行として参照されることがあります。
三つ目は、地域や当事者間に慣行があるかどうかです。地域によっては、更新料を支払うことが慣行として定着している場合があります。一方、慣行がない地域では、更新料の取り決め自体がないこともあります。
これらの確認を経たうえで、実際の取り決めへの話し合いが始まります。契約書の内容と経緯の確認が、いずれの場合も起点になります。
3. 更新料の金額を見るときに使われる考え方
更新料の金額を検討するとき、実務ではいくつかの考え方が参照されます。これらは「どれが正しい」ではなく、それぞれ異なる前提に立った参照の仕方です。
更地価格をベースにする考え方
土地の更地価格(路線価をもとに概算した価格)に一定の割合を掛けて考えることがあります。割合は地域や契約の経緯によって幅があります。更地価格に一定の割合を掛けて考えることはありますが、その割合が固定されているわけではありません。
借地権価格をベースにする考え方
更地価格に借地権割合を掛けた「借地権価格」に対して割合を掛ける方法です。借地権割合は国税庁の路線価図に記載されており、地域によって異なります。更地価格ベースとは異なる数字になることが多く、どちらを参照するかで金額の幅が生じます。
年額地代をベースにする考え方
現在の年間地代に一定の倍率を掛けて算出する方法です。倍率は契約の経緯や過去の取り決めによって異なります。地代水準が土地価格に対して低い場合、この方法では金額が小さくなることがあります。
これら複数の考え方から出てくる数字は、同じ土地でも異なります。「この金額が適正」と断言できるものではなく、複数の目線を並べてみることが、話し合いの前提を整えることにつながります。
4. 更新料を1つの式だけで決めにくい理由
更新料を1つの計算式で決めにくい理由は、計算に使う「土地価格」自体が複数の見方を持つからです。
路線価をベースにした更地価格と、実勢価格(実際に取引される市場価格)は、同じ土地でも数字が異なることがよくあります。路線価は公示価格の8割程度を目安に設定されており、実勢価格とは乖離があることも珍しくありません。
借地権割合も、国税庁が定める路線価図の数値が参照されますが、これは相続税評価のための数値であり、売買市場での実態と必ずしも一致しません。
さらに、「更地価格の何%」という割合自体に、定まった根拠があるわけではありません。地域の慣行、過去の取り決め、当事者間の交渉経緯によって変わります。
つまり、更新料の計算は「土地価格の見方」と「割合の見方」の組み合わせになります。どちらも幅があるため、結果として更新料にも幅が生じます。この幅を「レンジ」として確認しておくことが、話し合いの前提を整えることになります。
5. 更新料のレンジを確認する
複数の考え方を入力して、更新料のレンジとして確認できるツールがあります。
路線価、面積、借地権割合、現在の年額地代を入力すると、3つの考え方(更地価格ベース・借地権価格ベース・地代倍率)それぞれの参考レンジが表示されます。正確な値でなくても構いません。分かる項目から入力して確認できます。
6. 出てきた数字をどう見るか
ツールで出てくる数字は、「更新料の正解」ではありません。複数の考え方を並べて、目安となるレンジを示すものです。
話し合いで出ている金額と、このレンジを見比べたとき、高めの位置にあれば、強めの提示として見られる可能性があります。低めの位置にあれば、控えめな提示として見られる可能性があります。
ただし、レンジの位置だけで判断する必要はありません。契約書の記載、過去の更新の経緯、地域の慣行、当事者の関係性など、数字以外の要素も話し合いに影響します。
このツールは、話し合いの前に「自分が見ている数字がどのあたりに位置するか」を確認するためのものです。数字を決めるためではなく、話し合いの前提を整えるためにご利用ください。
7. 更新料だけで判断しない方がよい理由
更新料は、借地関係における一つの要素です。更新料だけを切り取って判断しようとすると、見えにくくなることがあります。
まず、契約の種類によって更新の性格が異なります。旧借地法の契約と、借地借家法の普通借地権では、更新の仕組みが違います。定期借地権には更新がありません。契約の種類を確認せずに更新料の話を進めると、前提がずれることがあります。
次に、更新料の合意内容が、その後の地代や他の承諾料の話し合いに影響することがあります。更新のタイミングで地代の見直しが同時に行われることもあり、更新料だけを単独で決めようとすると、後で整合しなくなるケースがあります。
また、更新料は地主と借地人の長期的な関係の中にあります。金額だけでなく、双方が納得できる根拠と経緯を整理しておくことが、その後の関係にも影響します。
8. 話し合いの前に整理しておきたいこと
更新料について話し合う前に、整理しておくと良いことがあります。順番として参考にしてください。
まず、手元の契約書を確認します。更新料の定めがあるか、どのような表現で記載されているかを確認します。契約書が見当たらない場合は、登記情報や過去の取り交わし書類から辿れることがあります。
次に、土地価格の目線を確認します。路線価をもとにした更地価格の概算を出しておくと、複数の考え方による計算結果を比較しやすくなります。
そのうえで、複数の考え方による更新料のレンジを確認します。1つの方法だけでなく、いくつかの見方を並べることで、話し合いの前提として共有できる幅が見えてきます。
これらを整理しておくと、何を確認しながら話し合うべきかが見えやすくなります。何が論点になるかを事前に把握しておくことが、話し合いの前提を揃えるうえで役立ちます。
このページの考え方は、「借地のミカタ」の一部です。
借地のミカタは、地主と土地を借りている方が、
同じ前提を見るための場所です。
更新料・承諾料・地代——立場が違っても、
判断のもとになる情報は共通します。