借地の話し合いで、話が止まることがあります。金額について話しているつもりなのに、相手の反応がかみ合わない。
その原因の多くは、「どの金額について話しているか」が双方で揃っていないことにあります。
借地に関わる金額は一種類ではありません。地代・更新料・承諾料・借地権価格——それぞれ性質が異なり、発生するタイミングも、根拠にする考え方も違います。
地代:継続的に発生する使用料
地代は、土地を借りることへの対価として、継続的に支払われる金額です。月払いまたは年払いが一般的で、契約の存続中は定期的に発生します。
地代の水準については、法律に定められた唯一の正解があるわけではありません。固定資産税の倍率・近隣の相場・路線価を用いた計算・過去からの継続など、複数の算定方法が実務では混在しています。
地主と借地人が異なる算定方法を前提に話し合うと、金額そのものより前に「何を根拠にするか」のズレが表面化します。
更新料:更新のタイミングで発生する一時金
更新料は、借地契約の更新にあたって、借地人から地主へ支払われることがある一時金です。契約書に定めがある場合はその記載が基準になりますが、記載がない契約も多くあります。
更新料については、法律上の支払い義務は定められていません。慣行・過去の実績・地域の水準などを根拠に話し合いが行われることになります。
そのため、地主側は「更新の節目に確認するもの」として、借地人側は「前回なかったのだから今回も不要」として、それぞれ異なる前提で話が始まることがあります。
承諾料:地主の承諾が必要な行為に伴う一時金
承諾料は、借地人が地主の承諾を必要とする行為——建替え・譲渡・名義変更など——を行う際に支払われることがある一時金です。
主な種類として、以下のものがあります。
- 建替承諾料:借地上の建物を建て替える際に発生することがある。更地価格の3〜5%程度が参照されることがある。
- 譲渡承諾料:借地権を第三者に売却・譲渡する際に発生することがある。借地権価格の10〜15%程度が参照されることがある。
- 名義書換料:相続以外の事由で借地人の名義が変わる際に発生することがある。借地権価格の5〜10%程度が参照されることがある。
これらも更新料と同様、法律上の義務が明確に定められているわけではなく、契約書の定め・慣行・過去の経緯が根拠になります。
借地権価格:土地に付着した権利の経済的価値
借地権価格は、借地人が持つ「その土地を借りる権利」の経済的価値を金額で表したものです。売買や相続、譲渡承諾料の計算などの場面で参照されます。
一般的な計算方法は「更地価格 × 借地権割合」です。借地権割合は国税庁が公表する路線価図に記載されており、地域によって30〜70%程度の幅があります。
借地権価格は、日常的に支払われるものではありません。権利の移転や承諾料の基準額を算出する際に、計算の基礎として使われます。
それぞれの金額が混在するとき
借地の話し合いでかみ合わなくなる原因の一つは、複数の金額項目が混在したまま話が進むことにあります。
「地代を上げたい」という話をしているとき、借地人側は「なぜ今のタイミングで?」と感じていることがあります。一方、地主側は「固定資産税も上がっているのだから当然」と考えています。
「更新料を払ってほしい」という話をしているとき、借地人側は「前回は払っていない」という実績を根拠にしています。地主側は「更新という節目に確認するのは自然だ」と考えています。
どちらも間違っているわけではありません。何を根拠にしているかが、見えていないだけです。
借地の話し合いは、「どの金額について、何を根拠に話しているか」を揃えることから始まります。
整理の出発点
話し合いを始める前に確認できることがあります。
- 今、話題にしている金額は何か(地代・更新料・承諾料・借地権価格のどれか)
- その金額について、契約書に定めはあるか
- 過去にどういう経緯があったか(支払い実績・話し合いの記録など)
- 相手側はどの根拠から話しているか
これらが整理されると、「どこで意見が分かれているか」が見えてきます。それぞれの金額の詳細については、コラム一覧の各記事で扱っています。
この記事のポイント
- 借地に関わる金額には、地代・更新料・承諾料・借地権価格の4種類がある
- それぞれ発生するタイミング・根拠・性質が異なる
- 地代は継続的な使用料、更新料・承諾料は一時金、借地権価格は権利の経済的価値
- 更新料・承諾料は法律上の支払い義務が明確ではなく、契約書・慣行・実績が根拠になる
- 話し合いが止まるとき、「どの金額について、何を根拠に話しているか」が揃っていないことが多い
借地の整理で迷っている方へ
e不動産屋株式会社
東京都知事免許(1)第1122324号
東京都葛飾区東立石3-32-3
代表取締役 井口雄介